X(Twitter)をビジネスで活用する中で、アカウントを増やしたいと考える場面は少なくありません。ブランドごとや用途別など、目的に応じた複数アカウント運用には多くのメリットがあります。
本記事では、企業アカウント担当者や経営者・個人事業主の方に向けて、アカウントを増やす手順や管理のポイント、注意点までわかりやすく解説します。
複数のX(Twitter)アカウントを持つ理由とビジネス活用のメリット
X(Twitter)で複数のアカウントを使い分けることは、情報発信の質を高めるだけでなく、戦略的なブランディングや業務効率化にもつながります。
ここでは、複数アカウントを運用する理由と、ビジネスにおける具体的な活用メリットを紹介します。
ターゲットに合わせた情報発信の最適化
ビジネスにおいて、ターゲットとなる顧客層は一様ではありません。たとえば、若年層と中高年層では、興味関心も情報収集のスタイルも異なります。単一のアカウントですべての層にアプローチしようとすると、発信内容がぼやけてしまい、効果が薄れることがあります。
それゆえ、アカウントを複数持つことで、それぞれのターゲット層に合わせたメッセージを発信できます。ターゲットごとに投稿のトーンやタイミングを調整することで、ユーザーとの関係性を深め、エンゲージメントを高めることが可能です。
ブランド・サービスごとの独立運用による信頼性向上
複数のブランドやサービスを展開している企業にとって、それぞれに専用のアカウントを設けることで、発信の一貫性と信頼性を高めることができます。ユーザーは自分が興味のあるブランドのアカウントだけをフォローできるため、ノイズが少なく、情報の受け取りやすさが向上します。
実際、トヨタやJAL、SONYなど大手企業は、サービス別アカウントや地域別アカウントなどを使い分けており、利用者のニーズに合わせた情報発信を行っています。
部門・業務別の役割分担と投稿のスピードアップ
企業の広報活動は多岐にわたります。商品情報、イベント案内、採用情報、カスタマーサポートなど、それぞれの業務に特化したアカウントを設けることで、各部門が自主的に運用できる体制を築けます。
これにより、投稿の優先順位で迷ったり、情報が混在したりするリスクが減少し、スピーディーで的確な情報発信が可能になります。顧客対応の迅速化にもつながり、企業全体の信頼感向上にも寄与します。
リスク分散としての複数アカウント運用
SNSの運用には、アカウントの凍結や不正アクセス、投稿の炎上といったリスクが常につきまといます。そうした事態が発生した場合でも、他のアカウントがあれば、代替的に情報を発信することができます。
また、フォロワーが一つのアカウントに集中していると、万が一停止された際の影響が大きくなります。アカウントを分散させることで、リスクの平準化が図れ、安定した情報提供が可能になります。
X(Twitter)でアカウントを追加する方法と注意点
X(Twitter)は、1人または1企業が複数のアカウントを保有・運用することを認めており、ビジネスシーンでも広く活用されています。ただし、アカウントの作成や管理にはいくつかの注意点があります。
この章では、Xでアカウントを増やす手順と、運用上押さえておきたいポイントを解説します。
ステップ①:新しいアカウントの作成方法
まず、追加するアカウントには新しいメールアドレスまたは電話番号が必要です。Xでは、1つのメールアドレスにつき1アカウントしか作成できない仕様のため、複数アカウントを運用する場合は、用途別に連絡先を分けておくとよいでしょう。
アカウント作成の基本的な手順は次のとおりです。
- 現在ログイン中のアカウントからログアウトして「新しいアカウントを作成」を選択
- アプリの場合、ログアウトしなくても、アイコンの隣の「…」から「新しいアカウントを作成」を選択可能
- 名前、電話番号またはメールアドレス、生年月日を入力
- 名前は「アカウント名」として公開されるため、企業名やブランド名等を入力する
- 生年月日は「18歳以下」の誕生日すると一部閲覧制限がかかるなどがあるため、注意する
- 認証コードを入力し、本人確認を完了
- パスワードやユーザー名などのアカウント情報を設定
- 必要に応じてプロフィールやヘッダー画像を設定し、運用開始
ビジネス用アカウントを作る場合は、プロフィール欄に「公式」「サポート」「採用担当」などの役割を明記すると、ユーザーからの信頼性が高まります。
また、同じ端末で複数アカウントを使う場合も、アプリ上で簡単に追加・切り替えが可能です。次項で、詳しく解説します。
ステップ②:アカウント切り替えと管理のポイント
X公式アプリでは、1つのアプリ内に最大5アカウントまで登録・切り替えが可能です(2025年6月現在)。アカウントの追加・管理の詳細は、X公式ヘルプ「Creating and managing multiple X accounts」でも案内されています。
アプリでの切り替え手順は非常にシンプルです。
- ホーム画面上部にあるプロフィールアイコンをタップ
- 表示されるアイコンの一覧から、切り替えたいアカウントを選択
- [+]マークをタップすれば、新規アカウント作成や既存アカウントの追加も可能
特に複数のブランドや部署でアカウントを使い分けている場合には、投稿ミスや混乱を防ぐためにも、アカウント名やプロフィール画像をわかりやすく区別する工夫が求められます。
例えば
- アカウント名に「広報部」「商品紹介」など役割を加える
- プロフィール文で運用目的を明示する
- ロゴやカバー画像にブランド名や部門名を入れる
こうした工夫によって、社内外の認識ズレを防ぎ、信頼性のある発信が可能になります。
複数アカウント管理で押さえておきたい注意点
アカウントが増えることで、以下のような管理上の課題が生じやすくなります。
- どのアカウントでどの投稿をするか判断に迷う
- 誤って別のアカウントから投稿してしまう
- パスワードの管理ミスや権限の混在
これらを防ぐために、事前のルール設計が重要になります。以下は、複数アカウントを安定的に運用するために押さえておきたいポイントです。
- 投稿のルールを整備すること
- 各アカウントの投稿ジャンルや更新頻度を明確に決めておくと、情報が混在せず、ユーザーにも伝わりやすくなります。
- 担当者の責任範囲を明確にすること
- 複数人で管理する場合、誰がどのアカウントを担当するのか、緊急時の対応ルールも含めて明文化しておくと安心です。
- ログイン情報の安全管理
- 企業運用の場合、パスワードの共有や変更履歴、二段階認証の設定など、セキュリティ面にも注意を払いましょう。
また、運用担当者が入れ替わる場合にも備えて、アカウント管理台帳(ログインID、用途、担当者、備考など)を整えておくことも有効です。
複数アカウント運用で気をつけたい法的・倫理的な注意点
複数のX(Twitter)アカウントを運用すること自体は、規約違反ではありません。
しかし、その使い方によっては、意図せず利用規約に抵触したり、ユーザーからの信頼を損ねたりするリスクがあります。特にビジネス利用では、法的・倫理的な配慮が欠かせません。
この章では、安心して運用するために注意すべきポイントを紹介します。
X(Twitter)の利用規約に基づいた適切な運用
Xの利用規約では、複数アカウントの所持自体は禁止されていません。ただし、以下のような行為は明確に規約違反とされ、アカウントの凍結や制限につながる可能性があります。
- 同一内容を複数アカウントで繰り返し投稿する(スパム行為)
- 自作自演でリポスト・いいねを繰り返し、人気を偽装する行為
- なりすましや虚偽の情報を用いたアカウントの運用
- 不正な手段でのフォロワー獲得(相互フォロー目的の乱立など)
これらはユーザー体験を損なうだけでなく、Xの信頼性を損なう行為とみなされ、厳しく対処されることがあります。特にビジネス運用では、アカウントごとに独自の目的や発信スタイルを設計し、健全な運用を心がけることが求められます。
Xの利用規約はこちらから確認できます。
https://twitter.com/en/tos
ステルスマーケティング(ステマ)への配慮
複数アカウントを使って「第三者の声」を装い、自社商品やサービスを称賛する行為は、消費者に誤解を与えるおそれがあります。こうした投稿は、いわゆる「ステルスマーケティング(ステマ)」に該当する可能性があり、企業アカウントにとっては大きなリスクとなります。
2023年には、消費者庁が景品表示法の中でステマ規制を明文化し、企業側が「広告であることを隠して宣伝を行う」行為は違法となる場合があるとしています。たとえば以下のようなケースは特に注意が必要です。
- 複数アカウントで自社商品を「自然な口コミ風」に繰り返し投稿
- 社員が個人アカウントで企業案件であることを明かさず投稿
- あたかも顧客の声であるかのように自演で感想を拡散
これらを防ぐには、「PR」「提供:〇〇社」「〇〇の中の人が運営しています」といった情報を明示することで、ユーザーとの信頼関係を築くことができます。
参考:消費者庁「ステルスマーケティングに関する表示」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
誤認防止のためのプロフィール設計
複数アカウントを運用する場合、それぞれの役割や目的が明確であることは、社内外にとって重要です。特に企業アカウントでは、誤解を生まないための工夫が求められます。
たとえば、同じ企業が「公式」「サポート」「採用」「キャンペーン用」など複数アカウントを運用している場合、それぞれのプロフィールや表示名が似ていると、ユーザーが混乱する原因になります。
その対策として、次のようなポイントを押さえると安心です。
- 表示名やユーザー名に「〇〇公式」「〇〇サポート」などの機能を明記
- プロフィール欄に所属・役割・投稿内容の範囲を説明
- ヘッダー画像やアイコンを統一感あるものにすることでブランドを明確にする
ユーザーが「誰が何を伝えているのか」を一目で理解できる設計は、結果的にエンゲージメントの向上にもつながります。
複数アカウントを活かした効果的なX(Twitter)運用のヒント
アカウントを増やすこと自体は簡単ですが、それをどう運用するかが成果を左右します。複数アカウントを効果的に使い分けることで、フォロワーとの関係性が深まり、ビジネス成果にもつながります。
この章では、アカウントを最大限に活かすための実践的な運用ヒントをご紹介します。
投稿内容をアカウントごとに明確化する
複数のアカウントを持つ一番の強みは、それぞれのアカウントに役割を持たせられることです。役割が明確であるほど、ユーザーにとっての「わかりやすさ」や「信頼感」につながります。
たとえば、以下のようなケースがよく見られます。
- ブランド別アカウント
たとえば、株式会社 ファーストリテイリングは「ユニクロ」や「GU」「PLST」といったブランド別に専用アカウントを展開しています。これにより、それぞれのブランディングや告知内容に最適化した情報発信が可能になります。 - サービス別アカウント
カスタマーサポート用アカウントでは、ユーザーの質問にすばやく対応できるよう、平日営業時間内に応答する体制を整えて運用。採用アカウントでは、社員の声や社内の雰囲気など、応募者向けの投稿に特化するなど、サービス別に発信することでユーザーにとってもわかりやすくなります。 - 地域別アカウント
多拠点展開している企業では、各地域のイベント・店舗情報・限定キャンペーンを個別に発信できるよう、地域ごとにアカウントを用意すると良いでしょう。 - ターゲット別アカウント
たとえば、B2B企業が「技術者向けアカウント」と「経営層向けアカウント」を分けることで、それぞれに最適なトーンと内容でアプローチできます。
このように、発信内容や目的に応じてアカウントの「専門性」を高めていくと、フォロワーとの信頼関係が強化され、エンゲージメント率の向上にもつながります。
分析ツールで成果をチェック
複数アカウント運用では、「どのアカウントがどう貢献しているか」を客観的に把握することが大切です。そのためには、Xのアナリティクスや外部分析ツールを活用し、パフォーマンスを定期的に確認しましょう。
たとえば、次のような指標をチェックすることで改善につなげられます。
- インプレッション数やエンゲージメント率の推移
- 投稿時間帯や曜日ごとの反応傾向
- フォロワーの増減や属性の変化
- 特定の投稿の反応が他のアカウントとどう違うか
これらの数値をもとに、投稿タイミングを変えたり、反応の良いフォーマット(画像・動画・スレッド)を増やしたりと、実験的に改善を重ねていくことで、アカウント全体のパフォーマンスを引き上げていくことができます。
一括管理ツールの活用もおすすめ
複数アカウントを日々運用する際に役立つのが、SNS一括管理ツールです。たとえば以下のようなツールは、多くの企業でも利用されています。
- SocialDog(ソーシャルドッグ)
日本語対応かつX特化型の管理ツールで、分析と自動投稿に強みがあります。国産ツールでサポートも手厚いため、初心者にも扱いやすいです。 - Hootsuite(フートスイート)
投稿予約、アナリティクス、チームメンバーごとの管理が可能。複数アカウントのダッシュボードを一元化できます。 - Buffer(バッファ)
直感的に使える操作性で、複数アカウントへの同時投稿や予約が簡単。無料プランもあるため、個人事業主にも人気です。
これらのツールを使うことで、業務効率化だけでなく、投稿品質の均一化や人的ミスの防止にもつながります。特に複数人で運用している場合には、承認フローの導入など、ガバナンス強化の観点でも効果的です。
まとめ
X(Twitter)において複数のアカウントを運用することは、情報の届け方を最適化し、ユーザーとの接点を多角的に築くうえで非常に有効な手段です。ブランド別、ターゲット別、サービス別など、目的に応じてアカウントを使い分けることで、発信内容に一貫性と専門性が生まれ、結果としてフォロワーからの信頼やエンゲージメントの向上につながります。
一方で、アカウントを増やすことで情報管理や投稿ミスのリスクが高まることも忘れてはいけません。運用ルールや投稿フローを整え、ステルスマーケティングや利用規約違反といったリスクにも十分注意を払うことが大切です。
また、公式アプリのアカウント切り替え機能やSNS管理ツールを活用することで、効率的かつ安全な運用体制を整えることができます。分析データをもとに改善を重ねながら、アカウントごとの役割を最大限に活かした発信を続けていきましょう。
ビジネスの成長に合わせて、柔軟にアカウントを設計・活用していくことが、X(Twitter)を活かした情報戦略の鍵になります。